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そこに消えない正円ができた理由を私は知っている 

それなりに忙しかったんだ。月末は!
ハァハァ…く、苦しい…というカンジの月末でございました。

とりあえず、8月になる準備を終えまして、今、一息つこうと思ったけれど、やろうと思えばやらなきゃいけないことが実は腐るほどあるという、実に幸せな忙しい毎日…。

だけど語ろう、あの日のことを。
そうだ…あれは確か8月だった…。

【そこに消えない正円ができた理由を私は知っている】

そんなタイトルにしよう。だってその通りだもん。そんなカンジで、そこに消えない円形ができた理由を語りたいと思います。

あれは私がまだ20代、とある会社に勤めていた時のことです。その会社では毎朝、社長を交えての朝の会議なるものをやっておりました。会議とは言っても、朝礼のようなもので、社内にいる全員を応接フロアに集めてなんだかんだとお話をするというものでした。(二日酔いなのに会議前に生グレープジュースを一気飲みして、会議中にそのフロアで豪快に吐き出してしまい、ものすんごく怒られたことがあります。グレープジュースは紫ですのである意味、地獄絵図でした。)

まぁとにかくそこに社員はみんな集められるのです。そんなに大きな会社ではありません。多い日でも20人くらいでしょうか。

その20人は、自分のデスクから椅子を持ち寄ります。椅子は下にコロコロがついている、超事務!みたいなヤツでいろは灰色です。もちろんくるくる回ります。その椅子は持ち上げようと思うとけっこう重たいので私はいつも持ち上げず、コロコロがついているわけですから、キロキロと音をさせながら押して運んでいました。

2011-08-01-01.jpg

そんな朝の日課。なんの問題もなく(いや二日酔いとかあるけど)過ごしていたのです。

そこへある日、新入社員が入ってきました。私よりも少し年上の爽やかなのにワイルド風なイケメン。このイケメンはきっと世間ではイケメンなんでしょうけど、私の好みではありません。まず、色黒が嫌いですから、その日焼けなの?自グロなの?みたいな色がダメ。それから眉毛が男らしすぎ。それから筋肉もつき過ぎ。それから短髪も無理!と、そんなに文句をつけられる筋合いは全くないとは思うのですが、君なんかに興味はもてませんよというタイプでした。

そして極めつけは、そのカッコつけ方。東京生まれの東京育ちがどーしたって?だから?と、言いたくなってしまうほど、ホントは東京じゃねーんじゃねぇかと疑いたくなるほど、地元が東京であることにこだわり、最近の流行りがどーのこーのとあらゆる先端にこだわり、スーツのブランドなんて聞いてねぇよ、六本木のクラブなんて興味ねぇよ、おまえの使ってるワックスもぜんぜん興味なんかないんだバカヤローと思わせられる人でした。

そんなカッコつけ野郎の彼、名前を山崎くんと言いました。

山崎くんが入社して1週間くらい過ぎたころでしょうか。朝の会議が始りますから社員のみんなは椅子を運びます。私のデスクはフロアから一番遠い場所にありましたので、みなさんがぞろぞろと椅子を転がしていく一番最後をついていくというような感じになります。そして私の前に山崎くんがいました。

キロキロゴロゴロ…と椅子を移動する音。みんな重たい椅子を持ち上げたくありませんから、おかしな音をさせながらも背もたれ部分を押して移動させます。でも山崎くんはこの日、椅子を転がしてはいませんでした。私は後姿を見ているだけですが、彼は椅子の背もたれ部分をしっかりと持って運んでいるようでした。まぁ、そんな椅子の運び方に文句をつけるような心の狭い私ではありませんから、なんとも思わなかったのですが…。

思わなかったのですが…。

その後、私の目の前で事件は起きました。

フロア部分に次々と社員の皆さんが到着し、椅子に座って社長を待ちます。私も一番後ろですが、座りました。私が座るのと同時くらいに山崎くんが椅子を床に置いた時、その椅子は

クラリ

と倒れたのです。

椅子が倒れたのです。椅子なのに。

私の目の前で倒れた椅子に、釘付けで驚いているのは私と山崎くんだけでした。位置的に私と山崎くんしか目撃しなかったようです。

なぜ倒れたんだろう?と椅子の足部分を見ると、ありません。椅子の足がないのです。椅子全体をよくよく見てみると、信じられないことに、背もたれと座る部分から伸びた鉄がニョッキリと真っすぐに伸びているだけなのです。その下にあるべきヒトデにコロコロのついたような足と呼べる物体がなかったのです。

山崎くんは、椅子を持ちあげて持ってきました。持ちあげた時に、自分のデスクに足だけ残して持ってきてしまったのです。

まぁ、気付かずにそんなことをしてしまったらそれなりには恥ずかしいです。でも、普通に「あ、椅子の上だけ持ってきちゃった」とか言って爽やかに失敗を認めれば、これはそんなに最上級の恥ずかしさというものでもありません。ですから当然そういう行動にでるのだろうと思ったのです。

それに目撃していたのは私だけですし、この事実に気が付いているのも私だけなのですから、後ろにいる私にそう言えばいいんです。それで済むはずなんです、普通は。

それなのに山崎くんは、まず、無言で私を睨みつけ、それは色黒なのに真っ赤になってますか?というカンジのエンジ色のような顔色になりました。すごい形相で私は一瞬びっくりしましたが、いや、ここは私がビビってどうする、と思い直して睨み返してやりました。

すると山崎くんは、今度は泣きそうな表情で悔しそうに倒れた椅子の上を私によこすのです。無言で。

差し出された足なし椅子はなぜか受け取るしかないような空気でしたので、こちらも無言で受け取りました。その直後、山崎くんは猛スピードで去って行きます。おそらく足をとりに行ったのでしょう。

短い鉄パイプに椅子らしきものがくっついた物体を持ち、立ち尽くす私。

その後、会議の始る直前に山崎くんは足だけを持って戻り、急いで足を床に置いたらまた無言で私の手から短い鉄パイプに椅子らしきものがくっついた物体を奪い取って、足にハメました。

社長がやって来て朝の会議が始ります。私は目の前に座る山崎くんの後ろ姿を見ていました。

今、一体何が起きて、私は何で山崎くんの椅子を持っていなくてはいけなかったんだ?と、普通に考えてしまいます。いや、別にいいんですよ、「持ってて」と言われれば持ってますよ、そのくらい。だけどそんな無言で押しつけられたってねぇ…。

そして私の頭は会議中、だんだんと冷静にこの出来事について考えます。

山崎くん、君はこの事実を隠したいと思っているね?
ものすごく恥ずかしいと思っているね?
私以外の誰にも見られなかっただろうかと心配しているね?
私にはいったいどんな面白い言い訳とかしてくれんの?
すっごい恥ずかしいことすんのねってつっこんだらどんな顔するの?
そして私はどのタイミングであんたを笑い飛ばせばいいのかしら?

と、私の中の悪魔が今か今かと目覚めを待ちます。(最低)

実際面白かったから今すぐにでも笑えますが、でも今は会議中。社長にこの間グレープジュースの件でみっちり怒られたばっかりだから問題行動はNG。おかしくても耐えられる、大丈夫、耐えよう。と、冷静に考えていました。

そして会議が終わったら山崎くんにどんな声をかけようかと思いつつ、何気なく彼の椅子がある床の辺りを見ました。

ぐふぉぉっ!

と、とたんに私は変な音を立ててしまいます。

その床は薄いベージュのカーペットでしたが、そこにはくっきりと黒に緑系のまざったようなギトギトの油で書かれたような、正円が描かれていたのです。

それは、間違いなく山崎くんが短い鉄パイプに椅子らしきものがくっついた物体を置いた跡です。鉄パイプの先っぽにくっついているギトギト油なのです。

しかもこんなにくっきりと。まあるい。

ヤバイ、どうしよう、面白い。イカン、ツボった。

私は笑いを堪えるために握りこぶしを作り、力を入れ、そしてなるべく山崎くんを見ないようにしました。心の中で落ち着け、笑うな、落ち着くんだ、と自分に言い聞かせました。

でもダメです。ふつふつをおかしさは込み上げてきます。そしてまた無意識にその床を見てしまいました。一瞬でまた目を逸らしますが、ふと、「これは落ちない。ジュースとは違う。」等ということを考えてしまうのです。耐えられなくなった私は、また咳をするかのように「ゴヘゴヘ」と笑いを混ぜつつのおかしな音を立てます。

そしてその時、山崎くんが「うるさいな。」と言わんばかりの迷惑そうな顔で振り返りました。そんな山崎くんと目が合うと、とたんに彼が許せなくなりました。

私がこんな目に合っているのは全て山崎くんのせいです。それなのにそんな迷惑そうな顔をするなんていうことが許されるかコノヤロウ、おまえにも地獄を見せてやる。そう思った私は「私語はヤメロ」と社長に怒られるのを覚悟で、山崎くんの肩をトントンと二回叩き、再度振り返った彼に無言で床の正円を指差しました。

次の瞬間、

ぐふぃぉふっ

という山崎くんのものすごい怪しげな噴き出し音。

ヤッタ。ツボった。ザマァ見ろ。

でも私も可笑しい、どうしよう。耐えがたい。


グフグフ、クツクツ、ゴフゴフ


会議中、後ろの方で、変な音を立てつつ笑いを堪える異様な2人は、あとでみっちり社長の秘書のおっかないおばさまに怒られました。

そして、社長の秘書のお説教が終わり帰ろうとする私たち2人に、

「あら?なにこの丸。」

と、あの正円を指差した時、私たち2人はたぶん一瞬心が繋がりました。

ここで笑うな、絶対笑うな、ふざけているのかと再度怒られる!

2人の心が一つにはなりましたが、一つになってもどうにもならなくて、

ギョワハハハハハ!と笑いだしてしまい、再度怒られ、笑いつつもその正円については「知りません。」を2人で口をそろえて言い張りました。

怒られ終わってデスクに戻る時、小さな声で「ごめん。」と言った山崎くんに、本当はつっこみたいことはたくさんあったはずだけど「うん、アレ黙っとくから。」と、あの正円のできた理由を語らぬことを約束してやりました。

その日の夜は、裏路地にある小さな焼き鳥屋で飲みつつ爆笑している男女の姿があったのは言うまでもありません。

そこに消えない正円ができた理由を私は知っていた…まぁ、それだけのハナシですよ。
ふふふw

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