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プロフィール
Author:立方晶窒化炭素 IK
(リッポウショウチッカタンソイズキチ)
性別:乙 血液型:A
年齢:ロックなアラフォー野郎(乙)
趣味:ドクロ収集・魚類、爬虫類、昆虫類グッズ収集・バンド・お掃除・お絵かき・読書・音楽鑑賞
音楽…マキシマムザホルモン・筋肉少女帯/特撮・人間椅子などなど
本…江戸川乱歩・小林泰三などなど
習性:カタイモノが大好き
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小学1年生、ガチ宝探し②
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早紀ちゃんのポケットから落ちた、ハートに矢が刺さった金色のブローチ。私が近所の大好きな中学生のお姉さん、奈央子ちゃんにそれを貰ったのはついこの間のことだった。奈央子ちゃんの家とは家族ぐるみのお付き合いをしていて、家族でよく夕飯をごちそうになりに行ったり、その逆もあったりで、一番年下の私はとても可愛がってもらっていた。
ブローチを貰ったその日も夕食にお呼ばれしていて、夕食後に奈央子ちゃんの部屋で遊んでいた。奈央子ちゃんはよれよれのピンクの豚のぬいぐるみにつけてあったそのブローチを私のオーバーオールの左胸の辺りにつけて「これね、昔お姉ちゃんに貰ったの。いずきちちゃん、とっても似合ってる。可愛い~。可愛いからあげるよ。」と言った。
奈央子ちゃんのお姉ちゃんである淳子ちゃんは、高校生になったばかりの美人なお姉さんだ。小学校1年生である私にとっては憧れの大人のお姉さんだった。その淳子ちゃんが昔奈央子ちゃんにくれたもので、今私の元にやってきたブローチということになる。
私は正直に言うと、ハートのブローチそのものはどうでもよかった。でも憧れのお姉さんたちの元を経由して私のものになることが何だか嬉しかったし、何よりも奈央子ちゃんが私に可愛いと言ってくれたことがとても嬉かった。だから個人的にそのブローチをして歩こうという気はないけれど、奈央子ちゃんが「可愛い」と喜ぶならいつでもつけようという考えはあった。ちょっとだけイヤな子供かもしれないけど、でも実際子供ってこんなもんじゃないのか?と今も思っている。
とにかくそのハートの金のブローチはどう考えても私のモノであるのに、なぜ、早紀ちゃんのポケットから出てくるのか…それは彼女が先ほどの私のごちゃごちゃ部屋から持ち出したとしか考えられなかった。ということは、早紀ちゃんは泥棒さん、ということになる。
私は今まで見えなかった糸がキランと光ってその道筋が明らかになるような感覚を覚えた。今までどうしても早紀ちゃんを好きになれなかったその原因が分かった。やっぱり野生のカンは当たっていた。早紀ちゃんの笑顔が気持ち悪いのは気のせいじゃない。笑顔が気持ち悪い…というか、下品? 品がないというのはのはこういうことなんだ。なるほど…と。
早紀ちゃんの正体が分かった今、彼女は敵である。私のモノを盗み出そうとしている悪党だ。もちろんお友達にもなれないし、そのブローチは置いていってもらわないといけない。私は少し緊張していたけれど、負ける気はさらさらなかった。できるだけ平静を装ってゆっくり静かに話しかけた。
「早紀ちゃん、それ、どうしたの?私のじゃない?」
最初から泥棒呼ばわりをしてはいけないと、気を使いつつ、静かではあるけれどきっぱりと言ったつもりだった。
すると早紀ちゃんはニッコリ笑って信じられない言葉を口にした。
「ああ、これね、いずきちちゃんの部屋にも同じのあったよねぇ、実は私も持ってるの。おそろいだね。」
え゛?
マジ?!そんなこと言っちゃうの???
いや、言えちゃうの?!
そんなドびっくりの心の声。目が点になるっていうのはこういう時かもしれない…。あまりにも予想していなかった返答に私は心底びっくりしてしまった。世の中にはこんなことをして笑顔でこんなことを言う人間がいる。人の世の恐ろしさをちょっとだけ思い知った瞬間だった。でも同時に、絶対にありえない理屈をこうもはっきりと言う早紀ちゃんが許せないと思った。だから私はこの勝負に負けてはならない。なんとしても勝たねばならない。
ブローチはもしかしたら「すごく気に入ったから、お願い、ちょうだい。」って言われれば、あげないこともないと思う。私にとっては奈央子ちゃんを喜ばすためだけのネタで、私自身がどうしても欲しているわけではない。ブローチもそんなヨコシマ野郎な私よりも、心から欲している女の子の元にいる方が幸せってもんなのかも…なんて考えなくもない。奈央子ちゃんにだって正直に説明すればいいだけの話だと思う。
でもコイツにだけは絶対に渡さない。こんな泥棒野郎でしかも大うそつきなコイツのものになるんだったらドブに捨てた方がマシだ。静かな怒りが沸々と湧きあがってきて、腹の底からぬおおおぉぉぉぉっと戦う気力があふれ出てくる。怒りは静かに、だけど気力は激しくボウボウと燃え盛るものの、さて、どうすればいいか…。
考えろ。でもあまり時間がない。
このままさらっと帰られてしまっては終わりだ。
こういうのは後からごちゃごちゃ言ったってきっとダメだ。
どうしよう。どうしたらいい?頭を使え。使うんだ。
戦いは肉体だけで行うものではないんだ。
賢くならなきゃ勝てない。きっとそう、この先ずっとそうなんだ。
だから考えろ、頑張れ、早く、早く…
焦る頭で、今この瞬間にできることをいろいろ考えた。考えた対処方法を実行するためのいずきち劇場が始る。頑張れ、負けるな、と心の中で何度も繰り返しながら挑んだ。
「そうなんだ、早紀ちゃんも持ってたんだ、同じの。
さっき部屋でおそろいだよって、教えてくれればよかったのに。」
まず、ここは認めることにした。
早紀ちゃんのそのバカらしい説を信じるバカを演じて油断させるんだ。
「えへへ、そうだよねぇ。言うの忘れてた。
それに自分のがポケットに入ってるのも忘れてた。」
早紀ちゃんの一瞬ホッとしたような表情を私は見逃さなかった。コイツはバカだ。こんなバカな理屈を言えるのは絶対根がバカだからだ。コイツに負けたら私は自分を一生許せない。何としても計画を成功させるために怪しまれないように、さぁ次のセリフだ!
「ねぇ、早紀ちゃんもう少しお外で遊ぼうよ。まだ時間も早いよ。」
「えっ?あ、うん、いいよ。何して遊ぶ?」
「近くに私の基地があるの。大きな松の木があるんだよ。見に行こう。」
「うん、いいよ、行こう。」
私は早紀ちゃんをいつも遊んでいる基地へと誘い出すことに成功した。
まずは第一段階クリア。さぁ、ここからが本番だ。絶対に取り戻してやる、姑息な早紀ちゃんには姑息な手を使ってでも私は勝つ!
私は今までまったくつまらなそうにしていて、自分から会話を投げかけたりもしていないくせに、急に積極的になるのもかなり不自然なのではないか…?と考えなかったわけではないけれど、とにかく自分のペースに持っていかなければいけなかったので手段を選んでいられなかった。不自然に思われたら思われた時のこと。ある程度大胆に事を運ばなきゃ事態はいつまでたっても変わらない。
「ねぇ、宝探しごっこしない?」
「宝探し?」
「早紀ちゃんってお姫さまみたいだよね、その髪の毛とかふわふわだし。私はそうだな、盗賊、ほら、黒い服とか着てるしね。だからお姫さまと盗賊の宝探しゲームだよ?」
早紀ちゃんはバカであると悟った私は、お姫さまという彼女にとって心地よさそうなキーワードを選んでわけのわからないゲームに誘い込んだ。少しでも気分がよくなれば、突っぱねられないと踏んだ私の策略だ。
「じゃぁ、まず最初は盗賊の私が宝物を隠すね。うーん、あっそうだ。さっきのハートのブローチを貸して?これなら宝物っぽいもんね、金色だしね。」
「えっ…でも…お外に隠すんでしょ?汚れない?」
「あ、汚れちゃったりするのイヤ?じゃぁ、私の部屋にあるの持ってこようか。」
「えっ、あ、えと、持ってくるのは大変でしょ、いいよ、貸すよ。」
部屋にあるはずのないブローチを取りに行かれては困ると思った早紀ちゃんは、複雑な表情でポケットからハートのブローチを取り出し、差し出す私の手のひらにそっと置いた。この瞬間流れた空気は何かの儀式のような感じがした。怪しげな私を取り巻くオーラに気づかれないよう緊張で湿った手のひらは、あらかじめこっそりとズボンのお尻あたりで拭いておいた。
「借りるねっ。」
それでも緊張の為、私は声が大きくなってしまっていることに気づく。気づかれないように笑顔を作ろうと務めた。でも二コリと笑った私のその笑顔の下には、バーカ、もともと私のだろうが。アホんだら。ウンコ野郎。もう二度と貴様の手には渡らないぜ、クヒヒヒヒヒヒヒ。という、恐ろしい感情が滾っていた。
「早紀ちゃん、そこの松の木のところで50数えてね。
あ、こっち見ちゃダメだよ?隠すからね。」
「うん、分かった。1,2,3,4,5,…」
後ろを向いて数を数え始めた早紀ちゃん。私はその辺の土を鬼のような勢いで掘り始めた。一か所だけではすぐに隠したところが分かってしまうと思い、何か所も何か所も。まるで気が違った犬のように50秒間ずっと、カカカカカカカカカっと掘り続けた。辺りは掘り散らかされた土と、埋められたのかなんだか分からないような後、そしてダミーのような埋められた後、そしてまたダミーのような掘られた後。
一心不乱に掘り続けた私の成し遂げた技は、自分で見てもたった50秒の間によくもこれだけ土をひっくり返すことができたもんだと感心したくなるほどだった。早紀ちゃんの数え方は、わりとゆっくりだったけれども。
その中の一か所、細いけれど深く掘った場所にブローチを隠した。絶対に見つからないという確信があった。
こんな広範囲の土のどこにあんな小さなブローチが埋められているのが分かるって言うんだ?くはははは、金属探知機でもない限り絶対に無理。あはは、無理。むはは、無理無理。
心の中の興奮状態を隠すのが大変だった。ニヤニヤしそうになる顔を普通に保つことがこんなに大変であるとは思わなかった。頑張って普通の顔を考える。考えれば考えるほど普通の顔が分からなくなっていくもの不思議な感覚だった。
「えー、宝物はどこかなぁ。」
その気になってお姫さまのような足取りで辺りをふらつく早紀ちゃんがものすごく間抜けで面白すぎて、私は今にも悪魔のような大笑いをしてしまいそうだったけれど、必死に耐えた。集中力が切れて耐えることに支障をきたしそうになると自分の手の甲をつねって、痛みでどうにか集中を持続させていた。
「姫、分かりますか?
あたなの宝物はどこに隠されているか、分かりますか?」
私はほくそ笑んでしまうその口元を見られないように、大真面目な声でそんなことを言う。自分は心底悪人なのではないかと思ったりもしたけれど、心の中を占める割合としては「悪人万歳!」と叫ぶ、ブラックいずきちの方が完全に多い。所詮私はそういう人間なのだ。だけど気が緩んで笑ってしまったらお終い。自分の手を痛めつつの挑戦。
そしてなかなか見つからない宝物。おろおろとし始める姫。それを見ているのが心地よくてたまらない。これは何という面白い遊びだ、最高だ。しかし、あまり長く楽しんではいられない。計画を成功させるのが目的であることを忘れてはならないのだ。
楽しみたいと思う悪魔のような自分を抑えるのも私の精神力で行わなければいけない。そろそろ仕上げにかかれ、失敗は許されないぞと、気合いを入れ直した。
「早紀ちゃん、見つからない?私の勝ちかなぁ。」
「うん、いすきちちゃん、ぜんぜんわかんないよ、宝物探しって難しいね。降参~。」
「よーし、それでは宝物を隠した場所の発表で~す。ええとね、たしかこの辺。あれ?違った。じゃぁこの辺?あれれ?違った。えー?たしかここに埋めたはずなのに、おかしいなぁ…。」
わざとらしくならないように努めたつもりでも、役者ではないわけだから、なんとも言えないものだったのだろうけど、その時は精一杯、全力で演じた。隠した場所がわからなくなっちゃったよ、どうしようっていう演技を。頭がおかしくないとこんな芸当はできないな…と今でも自分に対して密かに思ってしまう。
そして極めつけはラストシーン。ここもかなりの演技力が求められるぞ、頑張れいずきち、と自分に言い聞かせた。
「ごめんね、早紀ちゃん。せっかくのおそろいのブローチなのに私、隠したところが分からなくなっちゃった。ああ、なんということをぉぉ、ごめんねぇ、うおぉぉぉ、なんということぉおおおー、ごめんねぇー。はぅあーなんということををををぉぉぉぉ!」
「い、いいよ、仕方ないよ。残念だけど分からないものはしょうがないよ。」
「ごめんねぇぇぇ…あ、そうだ。私の部屋にある私のブローチ!それを早紀ちゃんにあげるよ。それがいいよ。ね、そうしよう。」
私ってヤツはこんなことを言ってまで、早紀ちゃんの表情を楽しみたいと思うゲテモノだ。1年生、いいのかこれで…。と、今改めて思ってしまう。
私の部屋にあるはずのないブローチ。だってそれは私のモノなんだから。高校生の淳子ちゃんがいつ買ったものかは知らないけれど、昔々のものであることはたしかだ。今現在まったく同じものが売っているとは思えない。でもそんなことは教えてあげないんだ。宝探しでなくしちゃった金のブローチがあったねっていういい思い出とともに、私は金のブローチを取り戻す。
その後早紀ちゃんは、私の「部屋にあるはずのブローチをあげるよ」攻撃に疲れ果ててしまい、半泣き状態で帰って行った。もちろん私は思いやり系、もしくは美しき友情系のセリフしか吐いていない。でも、早紀ちゃんは半泣きだった。
それからはもう二度と私に近寄らなくなっただけでなく、目もあわさなくなった。
…私の知らないところで泥棒さんやっててね、私には絶対に近づくな…
そんなふうに思って厄介なものを退治できたと喜んだ私だったけど、
……いや、待てよ?
それなりに扱い方さえ分かっていればそういう知り合いがいても楽しいのかな?…
と、何やら黒い感情に目覚めたのも事実だった。
でも、とりあえず放っておこう。面倒なことに自分から突っ込んでいかなくてもいいじゃないか。来るものが敵である時のみ、倒せばいいんだ。戦いを好んではいけない。
そう自分に言い聞かせたけれど、本当は学校で「金のブローチ」の話題を投げかけてみたいと思った。早紀ちゃんの歪むであろう表情を思うと何とも言えない楽しい気分になってしまってちょっと困った。
しかし、そんな黒い感情をほくほくと育てている私にもはやりバチはあたる。
早紀ちゃんに盗まれそうになったものは、盗まれなかったけれど実は私もあのあと本気でどこに埋めたか分からなくなって、かなりしつこく掘り返したのに見つからなかった。一瞬、早紀ちゃんが本当は見つけだのでは?とも考えたけどそれはない。ずっと観察していたのだから不可能だ。
金のハートのブローチは永遠に私にも早紀ちゃんにも手に届かないところへ行ってしまったというわけだ。悪くどい事を考える少女のもとにはいたくなかったのかもしれないと、1年生っぽく少しだけ反省したりもした。
でもその後、よくよく考えたら私もまだまだ詰めが甘いということに気づく。何も本当に埋めることはなかったんじゃないか?ということに。本当に賢い人だったら埋めたフリをしてブローチはポケットに入れるんだろう。必死な私は本当に埋めて自分でも分からなくなったバカ。これが何かの戦闘に関わることなら間違いなく死んでいるに違いない。うん、その点は大いに反省しとこう。そんなふうに思った。
そして、「友達100人はイラナイ。」
堂々とそう言えるようになるまでに時間はかからなかった。
変な大人の階段を1歩登った気がした。
今でもテレビで金属探知機がチラリと出てくる番組を目にすると、真っ先に思い浮かべるのは、土の中に埋めた金のハートのブローチ。
子供は子供の世界でこんな茶番を繰り広げる。
よく考えると現実ってけっこう恐ろしい。
早紀ちゃんは今どんな人生を歩んでいるのだろう。
終わり。
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早紀ちゃんのポケットから落ちた、ハートに矢が刺さった金色のブローチ。私が近所の大好きな中学生のお姉さん、奈央子ちゃんにそれを貰ったのはついこの間のことだった。奈央子ちゃんの家とは家族ぐるみのお付き合いをしていて、家族でよく夕飯をごちそうになりに行ったり、その逆もあったりで、一番年下の私はとても可愛がってもらっていた。
ブローチを貰ったその日も夕食にお呼ばれしていて、夕食後に奈央子ちゃんの部屋で遊んでいた。奈央子ちゃんはよれよれのピンクの豚のぬいぐるみにつけてあったそのブローチを私のオーバーオールの左胸の辺りにつけて「これね、昔お姉ちゃんに貰ったの。いずきちちゃん、とっても似合ってる。可愛い~。可愛いからあげるよ。」と言った。
奈央子ちゃんのお姉ちゃんである淳子ちゃんは、高校生になったばかりの美人なお姉さんだ。小学校1年生である私にとっては憧れの大人のお姉さんだった。その淳子ちゃんが昔奈央子ちゃんにくれたもので、今私の元にやってきたブローチということになる。
私は正直に言うと、ハートのブローチそのものはどうでもよかった。でも憧れのお姉さんたちの元を経由して私のものになることが何だか嬉しかったし、何よりも奈央子ちゃんが私に可愛いと言ってくれたことがとても嬉かった。だから個人的にそのブローチをして歩こうという気はないけれど、奈央子ちゃんが「可愛い」と喜ぶならいつでもつけようという考えはあった。ちょっとだけイヤな子供かもしれないけど、でも実際子供ってこんなもんじゃないのか?と今も思っている。
とにかくそのハートの金のブローチはどう考えても私のモノであるのに、なぜ、早紀ちゃんのポケットから出てくるのか…それは彼女が先ほどの私のごちゃごちゃ部屋から持ち出したとしか考えられなかった。ということは、早紀ちゃんは泥棒さん、ということになる。
私は今まで見えなかった糸がキランと光ってその道筋が明らかになるような感覚を覚えた。今までどうしても早紀ちゃんを好きになれなかったその原因が分かった。やっぱり野生のカンは当たっていた。早紀ちゃんの笑顔が気持ち悪いのは気のせいじゃない。笑顔が気持ち悪い…というか、下品? 品がないというのはのはこういうことなんだ。なるほど…と。
早紀ちゃんの正体が分かった今、彼女は敵である。私のモノを盗み出そうとしている悪党だ。もちろんお友達にもなれないし、そのブローチは置いていってもらわないといけない。私は少し緊張していたけれど、負ける気はさらさらなかった。できるだけ平静を装ってゆっくり静かに話しかけた。
「早紀ちゃん、それ、どうしたの?私のじゃない?」
最初から泥棒呼ばわりをしてはいけないと、気を使いつつ、静かではあるけれどきっぱりと言ったつもりだった。
すると早紀ちゃんはニッコリ笑って信じられない言葉を口にした。
「ああ、これね、いずきちちゃんの部屋にも同じのあったよねぇ、実は私も持ってるの。おそろいだね。」
え゛?
マジ?!そんなこと言っちゃうの???
いや、言えちゃうの?!
そんなドびっくりの心の声。目が点になるっていうのはこういう時かもしれない…。あまりにも予想していなかった返答に私は心底びっくりしてしまった。世の中にはこんなことをして笑顔でこんなことを言う人間がいる。人の世の恐ろしさをちょっとだけ思い知った瞬間だった。でも同時に、絶対にありえない理屈をこうもはっきりと言う早紀ちゃんが許せないと思った。だから私はこの勝負に負けてはならない。なんとしても勝たねばならない。
ブローチはもしかしたら「すごく気に入ったから、お願い、ちょうだい。」って言われれば、あげないこともないと思う。私にとっては奈央子ちゃんを喜ばすためだけのネタで、私自身がどうしても欲しているわけではない。ブローチもそんなヨコシマ野郎な私よりも、心から欲している女の子の元にいる方が幸せってもんなのかも…なんて考えなくもない。奈央子ちゃんにだって正直に説明すればいいだけの話だと思う。
でもコイツにだけは絶対に渡さない。こんな泥棒野郎でしかも大うそつきなコイツのものになるんだったらドブに捨てた方がマシだ。静かな怒りが沸々と湧きあがってきて、腹の底からぬおおおぉぉぉぉっと戦う気力があふれ出てくる。怒りは静かに、だけど気力は激しくボウボウと燃え盛るものの、さて、どうすればいいか…。
考えろ。でもあまり時間がない。
このままさらっと帰られてしまっては終わりだ。
こういうのは後からごちゃごちゃ言ったってきっとダメだ。
どうしよう。どうしたらいい?頭を使え。使うんだ。
戦いは肉体だけで行うものではないんだ。
賢くならなきゃ勝てない。きっとそう、この先ずっとそうなんだ。
だから考えろ、頑張れ、早く、早く…
焦る頭で、今この瞬間にできることをいろいろ考えた。考えた対処方法を実行するためのいずきち劇場が始る。頑張れ、負けるな、と心の中で何度も繰り返しながら挑んだ。
「そうなんだ、早紀ちゃんも持ってたんだ、同じの。
さっき部屋でおそろいだよって、教えてくれればよかったのに。」
まず、ここは認めることにした。
早紀ちゃんのそのバカらしい説を信じるバカを演じて油断させるんだ。
「えへへ、そうだよねぇ。言うの忘れてた。
それに自分のがポケットに入ってるのも忘れてた。」
早紀ちゃんの一瞬ホッとしたような表情を私は見逃さなかった。コイツはバカだ。こんなバカな理屈を言えるのは絶対根がバカだからだ。コイツに負けたら私は自分を一生許せない。何としても計画を成功させるために怪しまれないように、さぁ次のセリフだ!
「ねぇ、早紀ちゃんもう少しお外で遊ぼうよ。まだ時間も早いよ。」
「えっ?あ、うん、いいよ。何して遊ぶ?」
「近くに私の基地があるの。大きな松の木があるんだよ。見に行こう。」
「うん、いいよ、行こう。」
私は早紀ちゃんをいつも遊んでいる基地へと誘い出すことに成功した。
まずは第一段階クリア。さぁ、ここからが本番だ。絶対に取り戻してやる、姑息な早紀ちゃんには姑息な手を使ってでも私は勝つ!
私は今までまったくつまらなそうにしていて、自分から会話を投げかけたりもしていないくせに、急に積極的になるのもかなり不自然なのではないか…?と考えなかったわけではないけれど、とにかく自分のペースに持っていかなければいけなかったので手段を選んでいられなかった。不自然に思われたら思われた時のこと。ある程度大胆に事を運ばなきゃ事態はいつまでたっても変わらない。
「ねぇ、宝探しごっこしない?」
「宝探し?」
「早紀ちゃんってお姫さまみたいだよね、その髪の毛とかふわふわだし。私はそうだな、盗賊、ほら、黒い服とか着てるしね。だからお姫さまと盗賊の宝探しゲームだよ?」
早紀ちゃんはバカであると悟った私は、お姫さまという彼女にとって心地よさそうなキーワードを選んでわけのわからないゲームに誘い込んだ。少しでも気分がよくなれば、突っぱねられないと踏んだ私の策略だ。
「じゃぁ、まず最初は盗賊の私が宝物を隠すね。うーん、あっそうだ。さっきのハートのブローチを貸して?これなら宝物っぽいもんね、金色だしね。」
「えっ…でも…お外に隠すんでしょ?汚れない?」
「あ、汚れちゃったりするのイヤ?じゃぁ、私の部屋にあるの持ってこようか。」
「えっ、あ、えと、持ってくるのは大変でしょ、いいよ、貸すよ。」
部屋にあるはずのないブローチを取りに行かれては困ると思った早紀ちゃんは、複雑な表情でポケットからハートのブローチを取り出し、差し出す私の手のひらにそっと置いた。この瞬間流れた空気は何かの儀式のような感じがした。怪しげな私を取り巻くオーラに気づかれないよう緊張で湿った手のひらは、あらかじめこっそりとズボンのお尻あたりで拭いておいた。
「借りるねっ。」
それでも緊張の為、私は声が大きくなってしまっていることに気づく。気づかれないように笑顔を作ろうと務めた。でも二コリと笑った私のその笑顔の下には、バーカ、もともと私のだろうが。アホんだら。ウンコ野郎。もう二度と貴様の手には渡らないぜ、クヒヒヒヒヒヒヒ。という、恐ろしい感情が滾っていた。
「早紀ちゃん、そこの松の木のところで50数えてね。
あ、こっち見ちゃダメだよ?隠すからね。」
「うん、分かった。1,2,3,4,5,…」
後ろを向いて数を数え始めた早紀ちゃん。私はその辺の土を鬼のような勢いで掘り始めた。一か所だけではすぐに隠したところが分かってしまうと思い、何か所も何か所も。まるで気が違った犬のように50秒間ずっと、カカカカカカカカカっと掘り続けた。辺りは掘り散らかされた土と、埋められたのかなんだか分からないような後、そしてダミーのような埋められた後、そしてまたダミーのような掘られた後。
一心不乱に掘り続けた私の成し遂げた技は、自分で見てもたった50秒の間によくもこれだけ土をひっくり返すことができたもんだと感心したくなるほどだった。早紀ちゃんの数え方は、わりとゆっくりだったけれども。
その中の一か所、細いけれど深く掘った場所にブローチを隠した。絶対に見つからないという確信があった。
こんな広範囲の土のどこにあんな小さなブローチが埋められているのが分かるって言うんだ?くはははは、金属探知機でもない限り絶対に無理。あはは、無理。むはは、無理無理。
心の中の興奮状態を隠すのが大変だった。ニヤニヤしそうになる顔を普通に保つことがこんなに大変であるとは思わなかった。頑張って普通の顔を考える。考えれば考えるほど普通の顔が分からなくなっていくもの不思議な感覚だった。
「えー、宝物はどこかなぁ。」
その気になってお姫さまのような足取りで辺りをふらつく早紀ちゃんがものすごく間抜けで面白すぎて、私は今にも悪魔のような大笑いをしてしまいそうだったけれど、必死に耐えた。集中力が切れて耐えることに支障をきたしそうになると自分の手の甲をつねって、痛みでどうにか集中を持続させていた。
「姫、分かりますか?
あたなの宝物はどこに隠されているか、分かりますか?」
私はほくそ笑んでしまうその口元を見られないように、大真面目な声でそんなことを言う。自分は心底悪人なのではないかと思ったりもしたけれど、心の中を占める割合としては「悪人万歳!」と叫ぶ、ブラックいずきちの方が完全に多い。所詮私はそういう人間なのだ。だけど気が緩んで笑ってしまったらお終い。自分の手を痛めつつの挑戦。
そしてなかなか見つからない宝物。おろおろとし始める姫。それを見ているのが心地よくてたまらない。これは何という面白い遊びだ、最高だ。しかし、あまり長く楽しんではいられない。計画を成功させるのが目的であることを忘れてはならないのだ。
楽しみたいと思う悪魔のような自分を抑えるのも私の精神力で行わなければいけない。そろそろ仕上げにかかれ、失敗は許されないぞと、気合いを入れ直した。
「早紀ちゃん、見つからない?私の勝ちかなぁ。」
「うん、いすきちちゃん、ぜんぜんわかんないよ、宝物探しって難しいね。降参~。」
「よーし、それでは宝物を隠した場所の発表で~す。ええとね、たしかこの辺。あれ?違った。じゃぁこの辺?あれれ?違った。えー?たしかここに埋めたはずなのに、おかしいなぁ…。」
わざとらしくならないように努めたつもりでも、役者ではないわけだから、なんとも言えないものだったのだろうけど、その時は精一杯、全力で演じた。隠した場所がわからなくなっちゃったよ、どうしようっていう演技を。頭がおかしくないとこんな芸当はできないな…と今でも自分に対して密かに思ってしまう。
そして極めつけはラストシーン。ここもかなりの演技力が求められるぞ、頑張れいずきち、と自分に言い聞かせた。
「ごめんね、早紀ちゃん。せっかくのおそろいのブローチなのに私、隠したところが分からなくなっちゃった。ああ、なんということをぉぉ、ごめんねぇ、うおぉぉぉ、なんということぉおおおー、ごめんねぇー。はぅあーなんということををををぉぉぉぉ!」
「い、いいよ、仕方ないよ。残念だけど分からないものはしょうがないよ。」
「ごめんねぇぇぇ…あ、そうだ。私の部屋にある私のブローチ!それを早紀ちゃんにあげるよ。それがいいよ。ね、そうしよう。」
私ってヤツはこんなことを言ってまで、早紀ちゃんの表情を楽しみたいと思うゲテモノだ。1年生、いいのかこれで…。と、今改めて思ってしまう。
私の部屋にあるはずのないブローチ。だってそれは私のモノなんだから。高校生の淳子ちゃんがいつ買ったものかは知らないけれど、昔々のものであることはたしかだ。今現在まったく同じものが売っているとは思えない。でもそんなことは教えてあげないんだ。宝探しでなくしちゃった金のブローチがあったねっていういい思い出とともに、私は金のブローチを取り戻す。
その後早紀ちゃんは、私の「部屋にあるはずのブローチをあげるよ」攻撃に疲れ果ててしまい、半泣き状態で帰って行った。もちろん私は思いやり系、もしくは美しき友情系のセリフしか吐いていない。でも、早紀ちゃんは半泣きだった。
それからはもう二度と私に近寄らなくなっただけでなく、目もあわさなくなった。
…私の知らないところで泥棒さんやっててね、私には絶対に近づくな…
そんなふうに思って厄介なものを退治できたと喜んだ私だったけど、
……いや、待てよ?
それなりに扱い方さえ分かっていればそういう知り合いがいても楽しいのかな?…
と、何やら黒い感情に目覚めたのも事実だった。
でも、とりあえず放っておこう。面倒なことに自分から突っ込んでいかなくてもいいじゃないか。来るものが敵である時のみ、倒せばいいんだ。戦いを好んではいけない。
そう自分に言い聞かせたけれど、本当は学校で「金のブローチ」の話題を投げかけてみたいと思った。早紀ちゃんの歪むであろう表情を思うと何とも言えない楽しい気分になってしまってちょっと困った。
しかし、そんな黒い感情をほくほくと育てている私にもはやりバチはあたる。
早紀ちゃんに盗まれそうになったものは、盗まれなかったけれど実は私もあのあと本気でどこに埋めたか分からなくなって、かなりしつこく掘り返したのに見つからなかった。一瞬、早紀ちゃんが本当は見つけだのでは?とも考えたけどそれはない。ずっと観察していたのだから不可能だ。
金のハートのブローチは永遠に私にも早紀ちゃんにも手に届かないところへ行ってしまったというわけだ。悪くどい事を考える少女のもとにはいたくなかったのかもしれないと、1年生っぽく少しだけ反省したりもした。
でもその後、よくよく考えたら私もまだまだ詰めが甘いということに気づく。何も本当に埋めることはなかったんじゃないか?ということに。本当に賢い人だったら埋めたフリをしてブローチはポケットに入れるんだろう。必死な私は本当に埋めて自分でも分からなくなったバカ。これが何かの戦闘に関わることなら間違いなく死んでいるに違いない。うん、その点は大いに反省しとこう。そんなふうに思った。
そして、「友達100人はイラナイ。」
堂々とそう言えるようになるまでに時間はかからなかった。
変な大人の階段を1歩登った気がした。
今でもテレビで金属探知機がチラリと出てくる番組を目にすると、真っ先に思い浮かべるのは、土の中に埋めた金のハートのブローチ。
子供は子供の世界でこんな茶番を繰り広げる。
よく考えると現実ってけっこう恐ろしい。
早紀ちゃんは今どんな人生を歩んでいるのだろう。
終わり。
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カテゴリ合ってますか…。
主婦日記とかには混ぜてもらえない気がするんですよ。
カテゴリ分けって難しい。音楽関連のトコに行ってもいいかなぁ。
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